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サントリー美術館
サントリー美術館
東京都港区赤坂9-7-4 :六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階
「東京ミッドタウン」 21世紀の日本を代表する街、世界に類を見ない独創的な街が誕生しました。


The Maestro of Conception, KENZAN is here

着想のマエストロ 乾山 見参!

 尾形乾山〔深省〕(1663〜1743)は、絵師・尾形光琳の弟として京都の裕福な呉服商 「雁金屋」 に生まれ、恵まれた文化的環境に育ちます。 しかし、早くから隠棲の志が強かった乾山は、20歳代後半には仁和寺門前に隠居し、野々村仁清に作陶を学びました。 そして元禄12年(1699)、京都の北西・鳴滝泉谷に窯を築き、本格的に陶工としての活動を始めます。 窯の名は、京の乾の方角にあたることから 「乾山」 としました。
 乾山焼は陶磁の系譜としては京焼の伝統に連なるものの、乾山自身の高い芸術的素養によって、それまでにない造形を陶磁の世界に持ち込みました。 文芸・絵画・工芸といったジャンルや、時には国境までをも超えてさまざまな要素を結びつけた着想の世界は、現代においても新しさを失いません。 自由で想像力豊かな着想のマエストロ乾山の奏でる美の世界をご堪能ください。 さらに本展では、酒井抱一による琳派顕彰活動を経て、江戸で継承された知られざる 「乾山」 の姿もご紹介します。

 呉服商・雁金屋は徳川秀忠夫人や後水尾院の中宮・東福門院の御用を務めた豪商で、有力町衆として代々芸術的な活動も行ってきました。 さらには本阿弥光悦や樂家とも血縁関係を持つなど、文化的環境に恵まれた環境が乾山自身の美意識に大きな影響を与えたと言われます。


会期: 2015 5/27(水)〜 7/20(月・祝) 展覧会は終了しました。
※作品保護のため、会期中展示替えを行います。
休館日:毎週火曜日
開館時間:10時〜18時
※金・土、および 7/19(日)は20時まで開館
   ※いずれも入館は閉館30分前まで ※shop x cafe は会期中無休

会場:サントリー美術館 六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階



画像をクリックすると大きな画像でご覧いただけます。

着想のマエストロ「乾山 見参!」展

着想のマエストロ 「乾山 見参!」展
プレス内覧会 & プレス説明会
サントリー美術館 '2015 5/26


5歳年上の兄は、琳派の大成者・ 尾形光琳 です。

「展示構成」
本展覧会 「News Release No. sma0009」 および 「着想のマエストロ 『乾山 見参!』」 図録より抜粋して掲載しています。

「展示構成」
第1章 乾山への道 ― 京焼の源流と17世紀の京都
第2章 乾山颯爽登場 ― 和・漢ふたつの柱と太平面時代
第3章 「写し」 ― 乾山を支えた伝統と異国趣味
第4章 蓋物の宇宙 ― うつわの中の異世界
第5章 彩りの懐石具 ― 「うつわ」 からの開放
第6章 受け継がれる 「乾山」 ― その晩年と知られざる江戸の系譜


《織部花文州浜形手鉢》美濃

第1章 乾山への道 ― 京焼の源流と17世紀の京都
 桃山時代から江戸時代にかけて、京都でも焼物の生産が始まります。 近年そうした京焼の技術的な系譜が明らかになるにつれて、乾山窯もそれまでの押小路焼や仁清といった京焼の伝統を踏まえた窯のひとつだったことが分かりました。 焼物としての 「乾山」 は、こうした町衆の美意識と京焼の伝統が直に結び付いたところで誕生するのです。

・9拡大 《織部花文州浜形手鉢》 美濃 桃山時代 17世紀 サントリー美術館
高28.1 x 縦19.5 x 横25.0 
 ずっしりと重い手鉢。 白い土と鉄分の多い淡紅色の土の二種類で、白い土の部分には銅緑釉を掛け、淡紅色の土の部分には白泥で格子や花文を描いて銹絵で縁取る。 このような、緑と淡紅の肩身替の織部を鳴海織部と称する。 織部釉はとても濃い緑色で、豊かな艶をたたえる。


《色絵阿蘭陀写花卉文八角向付》尾形乾山

第3章 「写し」 ― 乾山を支えた伝統と異国趣味
 銹絵による独自の唐様を生み出した乾山は、一方で海外陶磁の 「写し」 にも早くから挑戦していました。 それは中国・東南アジア・ヨーロッパなどからの舶来品を珍重する文化人向けの 「焼物商売」。 あくまでオリジナルは着想の原点として、その持ち味を生かしつつ、様々な要素と組み合わせて新たな意匠にまとめ上げるのが腕の見せ所でした。

・(左)61 《色絵阿蘭陀写花卉文八角向付》 5客 尾形乾山 江戸時代 18世紀 出光美術館
(各)高8.0 x 口径12.8 x 底径9.2
 阿蘭陀と総称されたデルフト窯を中心とするヨーロッパ陶器に着想を得たもので、型打ち成形で八角形の向付としている。 その文様は、日本からオランダに注文された染付向付などに見られる花鳥文と似通い、それを独自の解釈によって再構成している。 内側にも草花文が配され、見込底部に洋風の花文が描かれている。


《銹絵染付掻落絵替汁次》尾形乾山

第5章 彩りの懐石具 ― 「うつわ」 からの開放
 乾山窯は正徳2(1712)年、鳴滝から京都市中の二条丁字屋町に移転し、懐石具を多く手掛けるようになります。 時はまさに京焼全体が飲食器の量産に向かっていた時代。 乾山も競合ひしめくこの分野で、果敢に勝負に出たのでした。 ここでも乾山最大の武器となったのは、文学意匠に基づく斬新なデザインです。 こうして乾山は 「うつわ」 の枠にとらわれない彩り豊かな懐石具で成功を収めたのです。

・(左)91拡大 《銹絵染付掻落絵替汁次》 10合 尾形乾山 江戸時代 18〜19世紀 MIHO MUSEUM
(各)高さ5.3〜6.3 x 注口含む総幅10.4〜10.6 x 口径5.7〜5.9 x 胴径8.0〜8.3 x 底径4.5〜4.7
 10合組の小ぶりの汁次である。 箱蓋表書には 「乾山焼加らみ次」、側面には 「乾山焼 そは切用からミ入」 とあり、蕎麦のつけ汁を入れる容器として制作されたものだったらしい。 図様は松・葵・菊・桐に薄・蔦・紅葉などで、掻き落としの技法で線描きを加えている。 井上馨の旧蔵品である。



『乾山焼―知とエスプリの饗宴―』   荒川正明(学習院大学教授) ―図録からの抜粋文章―

…尾形乾山の陶工として仕事の数々をみていくと、やや大げさな表現にはなるが、江戸時代前期における日本陶磁の知と技の集積、いわば百科事典を編むような側面もあったのではないかと思われる。… 例えば、桃山陶器の織部焼や古唐津の再現に早くも取り組んでおり、京の陶工としては前人未到の磁器への挑戦も行っていた。 つまり、知識を実際の作業を通じて具現化し、一方で実際のモノを分析して知識に置き換え、情報を蓄えていたのである。… 17世紀後半になると、寺院に庇護された御用窯的な窯、たとえば御室窯(仁和寺領)、清水焼(清水寺領)、音羽焼(妙法院領)などが次々に没落し、規模にまさる洛東への窯場へと小さな窯が多数吸収されていった。 京焼が、茶碗や茶人、水指などの茶陶を中心とする生産から、日常什器の生産へと切り替えられる時代の到来である。 このような京焼の量産化の時代に、乾山はあえてその時流に抗うように多品種の少量生産に励んでいく。 その姿勢には、採算性を平気で度外視していく、彼の業のようなものを感じざるを得ない。…近世・京焼の歴史は、このような活動を展開した乾山を中継地点として、17世紀までの京焼の伝統が乾山へと流れ込み、江戸時代中期から後期以降の京焼は乾山から、例えば仁阿弥道八などの革新的な陶芸が流れ出していったようにも見える。…乾山はもはや単なる才能豊かなアーティストという存在ではなく、京焼という世界を構築する 「知」 と 「技」 を集積して後世に伝えた、まさに京焼・中興の祖と位置づけすることができるであろう。…

尾形乾山(1663-1743) 関連年表から抜粋

1663( 1歳) 尾形乾山(権平・寛三郎)雁金屋に生まれる。
1675(13歳) 醍醐寺の三宝院高賢に金墨一挺を献上。 三宝院高賢のもとで光琳とともに能を演じる。
1687(25歳) 父・尾形宗謙没(67歳)。 月江正印墨蹟・書籍一式などを相続。 この頃 「深省」 と改名。
1696(34歳) 光琳、大名貸しが回収不能となり、乾山からも借金をする。
1699(37歳) 仁和寺へ開窯を願い出、許可される。 仁和寺より薪拝領を許可される。 二代仁清より 「陶器釉法伝書」 を授かる。 窯が築かれ、仁和寺より火入れを許可される。 「乾山焼」 と名付け、仁和寺宮へ茶碗を献上する。
1700(38歳) 二条家へ香炉、女院御所へ茶碗を献上する。 二条家へ八朔の祝儀として鉢を献上する。
1704(42歳) 光琳、江戸へ下向か。 二条家へ八朔の祝儀として茶碗を献上する。
1711(49歳) 二条家へ年始の祝儀として火入を献上する。 光琳、新町通り二条下ルに屋敷新築。
1712(50歳) 乾山窯、二条丁子屋町へ移転する。
1716(54歳) 光琳没(59歳)。
1731(69歳) 乾山、輪王寺宮公寛法親王に従って江戸へ下向か。 猪八、聖護院にて乾山焼継続。
1737(75歳) 銀座の役人が乾山焼商売の労を取る。 『陶工必用』(大和文華館蔵)完成。 乾山、佐野を訪れる。 『陶磁製方』を執筆する。
1743(81歳) 乾山没(81歳)。


お問合せTel:03-3479-8600
サントリー美術館公式サイト:http://suntory.jp/SMA/
主催:
サントリー美術館、読売新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、シャープ、サントリーホールディングス


参考資料:NEWS RELEASE No.sma0009、着想のマエストロ「乾山 見参!」図録、他
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